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【2026年8月】動画AIは「作る速さ」より「線引き」の時代へ|CapCut・Veo 3.1・HeyGenを小さな会社が使い分ける方法

2026年8月・動画とSNSのAI

この記事の要点

  • 動画AIの競争は「機能の多さ」から「どこまで任せるかの線引き」へ移りました
  • CapCut(キャップカット)は最も手軽ですが、規約上、アップロードする素材を選ぶ必要があります
  • 顔・図面・取引先情報が映る素材は、別のツールか外注に回すのが安全です

今月のテーマ:動画とSNS発信のAIツール

スマートフォン1台で動画が作れる時代になって数年が経ちました。2026年に入ってからの変化は、機能が増えたことではありません。「どこまでAIに任せてよいか」の判断が、事業の安全に直結するようになったことです。

今回は、小さな会社や一人事業者がいま実際に使える動画・SNS系のAIツールを整理します。前半で注目の3つを短く紹介し、後半で最も導入率が高い1つを掘り下げます。

まず押さえたい3つのサービス

1. Google Veo 3.1(グーグル・ヴェオ 3.1)

グーグルが提供する動画生成のAIです。文章で指示すると映像が出てくるのですが、2026年版の特徴はBGM・効果音・セリフの音声まで同時に作れる点にあります。操作の窓口は Google Flow(グーグル・フロー)というツールです。

料金は Google AI Pro(グーグル・エーアイ・プロ)が月2,900円で、1,000クレジットが付きます。上位の Google AI Ultra は月14,500円、入門の Google AI Plus は月725円です。

「クレジット」ってなに?

つまり回数券です。動画を1本作るたびに券をちぎって渡すイメージで、画質を上げるほど何枚もちぎられます。

言い方を変えると、電気の従量課金に近い仕組みです。同じ1本でも、高画質で長く回せばそれだけ多く消費します。「月2,900円で使い放題」ではなく「月2,900円で回数券1,000枚」と理解してください。

目安としては、下書き向けの高速モードなら月に数十本、仕上げ向けの高画質モードは1本およそ100クレジットを使うため月10本前後です。ラフを大量に作って、良かったものだけ高画質で仕上げる、という流れが現実的です。

2. HeyGen(ヘイジェン)

台本を入力すると、人の姿をしたCGの話し手(AIアバター)が読み上げてくれるサービスです。無料プランは月1クレジット(動画およそ1本分)、Creator が月29ドル(1ドル150円換算で約4,350円)、Pro が月49ドル(約7,350円)から、Business が月149ドル+人数課金となっています。

ただし日本語は、対応してはいるものの、イントネーションのくせや読み間違いが残ります。

これは実務でどう捉えるべき?

つまり「人が話す収録の代わり」にはまだならないということです。社長が出演する採用動画をこれに置き換えるのは、まだ早い段階にあります。

別の角度から言えば、社内で回す「たたき台」を作る道具です。原稿の読み上げ確認や、社内向けの手順説明動画であれば十分に実用に耐えます。

なお HeyGen は料金とクレジット付与量の改定が非常に頻繁です。契約前に必ず公式の料金ページで最新の数字を確認してください。

3. SNS投稿まわりのAI

投稿制作の側では Predis.ai(プレディスエーアイ)が、指示を1つ出すだけで映像・BGM・テロップ・キャプション・ハッシュタグをまとめて数秒で生成します。

分析の側では Iconosquare(アイコノスクエア)が、Instagram(インスタグラム)と TikTok(ティックトック)のフォロワー属性、最適な投稿時間、ハッシュタグの成績を可視化します。Threads(スレッズ)でも予約投稿がベータ版で使えるようになりました。

2026年の主流は「完全自動」ではありません

いま定着しているのは 「AIが作る → 人が承認する → 自動で投稿される」という半自動の流れです。つまり、AIは下書き係で、公開ボタンは人間が押します。

言い換えると、AIを新人スタッフとして扱い、上長の決裁を必ず1枚かませる運用です。SNSの炎上は「作る速さが足りない」ことではなく「止める仕組みがない」ことで起きます。人数の少ない会社ほど、この承認の1手間を省いてはいけません。

深掘り:CapCut(キャップカット)2026年版

ここからは、現場で圧倒的に導入率が高い CapCut を詳しく見ていきます。美容室でも建設業でも、すでにスマホに入っている率が高いにもかかわらず、規約上の注意点はあまり説明されていません。

2026年に増えた機能

  • オートエディット:素材を入れると自動で編集案を作る
  • 字幕生成:130以上の言語に対応、音声認識の精度も向上
  • AI音声:269種類の読み上げ音声
  • AIアバター:人物の話し手を合成
  • テキストから動画:台本を書くとシーン分割と字幕付きの動画になる

2026年3月の大型更新では、素材の内容を解析してテンプレートを自動生成する機能が、無料版と有料版の両方に入りました。

料金

CapCut Pro は月1,300円前後、年払いで約10,000円が国内表示の目安です(2026年4月時点)。ただし公式ページ上では月19.99ドル・年179.99ドルという表示も出ており、地域・OS・税・キャンペーンによって変動します。

金額を聞かれたときは「月1,300円前後、ただしご自身の画面で確認を」と答えるのが正確です。

開発元と、知っておくべき懸念

CapCut を開発しているのは ByteDance(バイトダンス)、TikTok と同じ会社で、本社は中国にあります。ただし「中国の会社だから危ない」という国名だけの判断は雑なので、中身を見ていきます。

まずデータの保管場所です。報じられている範囲では、日本のユーザーのデータは原則としてアメリカまたはシンガポールのサーバーに保存されます。中国本土に直接置かれているわけではありません。

実務でより効いてくるのは 2025年6月の利用規約の改定です。アップロードした素材について、運営会社側が包括的なライセンスを取得する内容が含まれています。

「包括的ライセンス」を平たく言うと

つまり、あなたがアップロードした映像を、運営会社が広く使ってよいという許可を、規約に同意した時点で渡しているということです。著作権そのものを取られるわけではありませんが、使用の許可は与えています。

角度を変えて言い直すと、写真屋さんに現像を頼んだら、申込書の裏に「このネガ、うちの店の宣伝にも使わせてね」と小さく書いてある状態です。現像そのものは問題なくできます。ただし、他人の顔が写ったネガを預けてよいのかは、まったく別の話になります。

さらに重要なのは、有料の Pro に課金しても、この2025年6月の改定による問題は解消されないという点です。Pro で広がるのは「CapCut 側が提供する一部素材を商用で使える範囲」であって、自分がアップロードした素材の扱いとは別の話です。

AIが作ったものの権利について

AIが生成した画像・映像・音声の著作権は、まだ法的に固まっていない領域です。生成結果が既存の作品に酷似していたり、特定の作風を模倣していると判断されれば、権利侵害のリスクは残ります。

つまり、AIが出したものが自動的に自分のものになるわけではありません。別の言い方をすれば、AIの出力は「まっさらな白い権利」ではなく「灰色の権利」で、商用で使うほど灰色の濃さが問題になってきます。

業種別:いま使ってよいか、どう使うか

想定シーン 現時点の可否 ポイント
美容室・サロン(1人) 最も相性が良い。顔が映る素材だけ同意書を先に整える
経理担当1名の建設業・製造業 条件付きで可 採用・社内手順は可。図面や現場写真は不可
商工会・組合・法人会 原則、慎重 自団体で完結する素材のみ。会員が映るものは別手段へ

ケース1:美容室・サロン(スタッフ1名)

最も相性の良い層です。次の順序で始めてください。

  1. スマホに CapCut を入れ、まず無料版で施術後のスタイル動画を3本作る(縦向き、10〜20秒)
  2. 自動字幕をオンにし、誤変換だけ直す(人名とメニュー名は必ず間違えます)
  3. 音楽は必ずアプリ内の商用利用が可能な素材から選ぶ
  4. 効果が見えてから Pro(月1,300円前後)に切り替える

音楽については補足が必要です。TikTok で流行っている曲をそのまま使うと、その動画を Instagram や YouTube に転載する段階で権利上の問題が起きます。最初からアプリ内の商用可素材だけを使ってください。

注意点はひとつ、しかし重大です

お客様の顔が映る素材は、書面での撮影・掲載の同意を取ってからアップロードしてください。自社だけの素材であれば「自社の判断」で済みますが、他人の顔が入った瞬間に「他人の権利を勝手に差し出す」構図になります。同意書はA4で1枚あれば足ります。

ケース2:経理担当1名の建設業・製造業

作れるものは、採用向けの現場紹介動画と、社内向けの作業手順動画です。テキストから動画を作る機能を使えば、既存の手順書をそのまま字幕付きの動画に変換できます。

一方で、はっきり「使わない」と決めるべき素材があります。

  • 図面
  • 施工中の現場写真
  • 取引先名が映る書類
  • 製造ラインの映像

これらは守秘義務や下請取引上の取り決めに触れる可能性があり、包括的ライセンスの対象に入れるべきではありません。

導入の順序としては、ツールを入れる前に「アップロードしてよい素材/だめな素材」の一覧を1枚作ることをおすすめします。担当者が1名の会社ほど判断が属人的になるため、紙にしておく価値が大きくなります。

ケース3:商工会・組合・法人会

セミナー告知や事業紹介の短い動画を作ること自体は有効です。ただし公的な性格の強い団体は、会員企業の情報や参加者の顔を扱う機会が多く、包括的ライセンスとの相性が良くありません。

現実的な解は役割分担です。素材の中身が自団体で完結するもの(告知動画、施設紹介)は CapCut で内製し、会員企業や参加者が映るものは、素材をアップロードせずAIが一から映像を作る Google Flow(Veo 3.1)に回すか、外注します。

会員向けセミナーの題材としては非常に有効です

「動画AIの使い方」と「規約の読み方」をセットで教える講座は、まだあまり行われていません。作り方だけを教える講座との差別化ができます。

まとめ:禁止ではなく、線を引く

CapCut のリスクは「自分の素材を渡すこと」に集中しています。逆に言えば、素材を渡さない使い方(テンプレートと生成機能のみ)であれば、リスクは大きく下がります。

素材をアップロードしたくない場合は Google Flow(Veo 3.1、月2,900円)、話し手のいる動画が欲しい場合は HeyGen の Creator(月29ドル、約4,350円)。編集の手軽さでは CapCut が依然として頭ひとつ抜けていますが、「顔と機密が映るかどうか」で使うツールを分けるのが、2026年8月時点の正解です。

禁止するのではなく、用途で線を引く。その線引きを1枚の紙にして手元に置くことが、いちばん確実な安全対策になります。

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